認知症予防効果FS研究会発足
 高齢化社会の到来に伴い、認知症予防方法の研究開発が望まれています。

 ウォーキングやポリフェノールを含んだ食事などいくつかの予防効果の報告があります。また、仲間を作って人とコミュニケーションを図ることも予防効果があると言われています。
 囲碁・将棋などの対人ゲームは、他の人とのコミュニケーションのきっかけになり、また、加齢によって低下しやすい「遂行機能(計画力)」「注意力」「記憶力」などの前頭前野機能を活用するために、認知症予防につながるという考えも広がっています。 対人ゲームの中でも、複数の人と楽しく取り組める麻雀は、デイサービス、地域社会福祉協議会活動、老人会活動などにおいて、認知症予防の効果が期待できると実施されています。
 ところが、高齢になると足腰の弱りから頻繁な外出が難しくなり、特に4人が揃う必要がある麻雀では、一緒に取り組める仲間の数の確保の難しさなどから、機会が持ちにくくなります。

 インターネットによる対人麻雀ゲームは、外出の必要がなく、一緒に活動してくれる相手をいつでも用意してくれるという点で、認知症予防の有効な手段になりうる可能性があると考えています。

 本研究では、インターネットを介した対人ゲームであるネット麻雀を行う高齢者の前頭前野機能について実験調査研究を行うものです。具体的には下記内容を計画しています。
 ①前頭前野機能の推移を縦断的(経時的)に調査します。
 ②ネット麻雀を行わない人、インターネットも使わない人との比較を通して、ネット麻雀をすることと前頭前野機能との間に、どのような関係があるかを横断的に調査します。
 ③さらに、アンケートを使って、それらの人々のライフスタイルを調査し、さまざまな行動習慣とネット麻雀の関係、認知機能の関係などについても調査を行います。
 それらの調査研究によって得られる知見は、広く公開することとし、認知症予防に関する研究開発の進展に貢献したいと考えています。

 これらの研究に今後、取り組むことをここに発表します。そして、この研究の趣旨に賛同いただき、調査にご協力いただける方々を、広く募集します。
■■メンバー
五藤博義(ごとう ひろよし):レデックス認知研究所・所長 ・・・・本研究の代表者
志村孚城(しむら たかき) :株式会社創生・代表取締役
              (日本生体医工学会BME on Dementia研究会 会長)
              (日本早期認知症学会理事長) 
篠原菊紀(しのはら きくのり):諏訪東京理科大学教授

※他、認知症研究に取り組む医師の方に協力要請中

協力:株式会社シグナルトーク
■■調査研究概要
 インターネット対人ゲームにおける、認知機能の使用と、相互作用に着目し、
 それらの認知症予防効果の可能性を検討する。

●研究方法
 1.インターネット対人ゲーム利用者と非利用者の認知機能の経時変化の調査
 2.インターネット対人ゲーム利用者に共通する生活および行動特性の分析
 3.インターネット対人ゲーム実施時の脳の賦活状況の測定と分析

●計画
 1.インターネット対人ゲーム利用者として、オンライン麻雀 Maru-Janの45万人
   会員に呼びかけ、調査協力者を募る
 2.インターネット利用及び非利用の高齢者を募り、比較対象のための調査協力者
   とする
 3.認知テスト(対人及びオンライン)、
   NIRS(多チャンネル近赤外線分光法装置)
   等による調査協力者の認知機能の継続的調査
 4.アンケートによる調査協力者の生活スタイルの解析と、統計手法による
   認知症予防効果への影響因子の解明

●関連事項
 ※認知機能の使用と認知症予防
  地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター・東京都老人総合研究所は、
  エピソード記憶、注意力、計画力の3つの認知機能を使う日常生活を送ることで、
  認知症を予防する認知症予防プログラムを研究発表している。

 ※麻雀ゲームと相互作用
  麻雀ゲームは、エピソード記憶(過去の場面と推移を思い出す)、
  注意(相手の捨て牌、自分の手牌などに同時に注意を払う)、
  計画力(手役とあがりを想定し、それに近づく手順をとる)を必要とし、
  他の3人の捨て牌や鳴き、
  リーチ宣言などに対応しながら手役作りを進める、高度な相互作用を行う。